スキー選びを考える
スキーを選ぶのって楽しい。
この先数シーズンを共に過ごす相棒を選ぶのだからドキドキだ。
たくさんのメーカーから自分にピッタリの一台を探し出す作業は情報収集の段階からエキサイティング。
大手メーカーか?
ガレージブランドか?
ゲレンデ主体で考えるのか?
バックカントリーなんかも選択肢に入れるのか?
あれこれ考えると夜も寝られない!
ネットで何時間もアレコレ調べたり、雑誌に穴が開くぐらいの眼力で何度も読んじゃったりして。
しかし、ちょっと待てよ。
我々はスキー選びの基準をちゃんと理解しているのだろうか?
溢れる情報に心を揺さぶられてフラフラしてしまっていないだろうか?
買ってしまってから「これは失敗だったかも…」と思わなくて済むようにしたいものです。
この先の冬を限界までエンジョイするために、しっかりとした軸を持ってスキー選びをするのが一番良いのではないかなぁと思います。
とくに中年になってからはこの先のスキーライフをよく考えて方向性を決めることが大切。
今まで培ってきた経験値で冷静にスキー選びをしなくてはいけないんじゃないかなぁ~と思います。
捉え方で変わるスキーの評価
そんなワケでちょっと真剣にスキー選びについて考えたいと思います。
まず一番大切なのは自分が「どんなスキー人生を送りたいと考えているか」について良く考えることだと思う。
意外に情報に流されたり、ショップ店員の意見に流されてしまったりしていないだろうか?
「雑誌評価が高かった」
「最近人気のブランドだと聞いた」
「なんでも出来る板だと聞いた」
こんな感じでスキーを選んでしまっていないだろうか?
誰でも自分のジャンルを知ってはいるが、自分が必要としているスキーを知らない場合がけっこうある。
バックカントリーを例に挙げてみても、春のロングルートを攻めるのかパウダーをメインにするのかで選ぶべきスキーは大きく変わる。
基礎系でもオールマウンテンに舵を切ってゲレンデ全体を楽しむのか、バッチリ整備されたバーンで美しいターン弧を描きたいのかで最適なスキーは変わる。
子連れで楽しくゲレンデを一日中滑りたいのと、同じレベルの仲間たちで刺激し合いながらスキーするのとでも大きな違いがある。
それだけに動画や雑誌のイメージにとらわれないでスキーに出掛けた一日をしっかりと頭の中でシミュレーションすることから始めるのが良いのではないかと思う。
「本当にキレキレのターンを一日中描ける体力はあるのか?その欲求は強いのか?」
「実は家族でゲレンデ全体をクルージング出来るのが望みなのではないか?」
「適度に楽しんだ後のレストランでのビールが最高なんではないか?」
どんなスキーでもその人が理想とするスタイルがきっとあるハズ。
技術や性能だけでない人生としてのスキーを今一度考え直してみたい。
なぜスキー選びで混乱するのか?
まず個人的に問題だと感じていることが
『スキーを良し悪しで判断しようとしている』ということがあるんじゃないかと思っている。
そもそも生産されたモノとしてのスキーに良し悪しは無い。
無いのだけれど「あれは良い」「アレはダメだ」そんな事を言ってしまってはいないだろうか?
高級素材とヨーロッパ生産だから『良い』?
安価な素材とアジア生産だから『悪い』?
扱いやすかったから『良い』?
しっくりこないから『悪い』?
その意見の根底には『向き不向き』や『好み』、または『先入観』があるかもしれない。
純粋な生産されたモノとしてのスキーに『良し悪し』は無い。
しかし困ったことに人間は物事の判断に『良し悪し』を持ち込みたがってしまう。
在りもしない『良し悪し』でスキーを判断しようとすれば、それはまともな判断に成り得るハズがない。
中年のスキー選びという事に関して言えば、中年は特に考え方に偏りが出やすいお年頃。
「俺は〇〇の板しか使わん」
「日本人なんだから日本製が良いに決まっとる」
意外にこんな発言は多く耳にする。
しかし、その考えはこの先の大切なスキーライフの相棒を選ぶのに適切だとは言えない。
中年は人生経験もスキー経験も豊富なのだから
「世の中素晴らしいスキーばかりだが、私の考えるスキーにピッタリなのはこれだ」
そういう選び方が出来るようになるのが一番大切なんじゃないかと思う。
時と場合、また使う人によってスキーの価値は大きく変わる。
例えば安価な作りのキッズ用スキーであっても、それをプレゼントされたことがキッカケで幼い子がスキーを大好きになったという事であれば、そのスキーはその子の人生にとって最高のスキーであると言えなくはないだろうか?
技術戦の為に日々研鑽していた人がフとしたことがキッカケでツアースキーを手にして山へ入り、人間が整備していない山肌で自分の価値観が変わってしまうほどの体験をしたとしたら、それだって最高のスキーであると言えなくはないだろうか?
最新テクノロジーやブランド価値に左右されない自分にとって最高のスキー。
私たちは本音ではそんなスキーに出会いたいのではないだろうか?
スキマ産業(仮)では試乗会レビューなどは極力自分の好みではなくて
「この板を気に入ってくれるのはどんな人なんだろう?」
「どんな人に進めようと自分は思うだろう」
という事を大切にしている。
欠陥品や設計に致命的なミスがあるモノでない限り、生産されたスキーは素晴らしい製品である。
スキーそれぞれにマッチした人がいて、スキー全てに滑り手の人生を素敵なものにする可能性がある。
自分にとって最高のスキーを選ぶために
やはり大切なのは自分の中に確固たる基準を持つこと。
ショップ店員に「カッコイイですよねぇ~」「なんでも出来ちゃう板ですよ~」って言われても惑わされない信念ともいえる基準。
カタログばかり見ていると自分の必要とするスキーが分からなくなってしまいやすい。
あまり真剣に自分の根っこの部分に向き合うってことはしないかもしれないが、自分のスキーに対する価値観をしっかりと持つことで見えてくるモノがあるのだと思う。
スキー選びの基準
そんなワケで、まずは欲しいスキーの基準をしっかりと組み立てよう。
よくよく考えると必ず自分のスキー選びにはいくつかの傾向があることがわかってくる。
しかし、それらをちゃんと認識していないとスキーを選んでいる際に頭から消えてしまう。
特に展示会でのスタッフのトークや、試乗会でのその日のコンディションにマッチしたスキーは受けるインパクトが大きいので気持ちが流されやすい。
そんな時にもちゃんと自分の中に確固たる基準を持ち続けたいものである。
そんなワケで色々と思い浮かぶスキー選びの基準だがいくつかピックアップして考えてみよう。
重くて強い⇔軽くて優しい
基本的にハイスピードに強くあらゆる雪面のコンディションに対応しやすいのは金属が内蔵されているスキーになる。
それだけに重量は増し、長時間扱うには相応の筋力と体力が必要になってくる。
逆に汎用性や低速でのコントロール性の高さを求めると軽量のスキーが当然向いている。
スキー場で一日楽しく過ごすのには移動も滑走も気軽な方が良い。
『重い』vs『軽い』という観点からスキーの特性と自分との相性が分かってくる。
「軽いは正義」と言う人もいるだろうがディナフィットの山岳レース用のスキーでバッチリ整備された圧雪バーンに深いカービング弧を描こうと考えたり、腰までの深さのパウダーを楽しもうとはしないだろう。
重量項目に記載された数字だけではなく、その奥にあるスキーの目的が自分の理想と合致するのかを考える必要がある。
今のレベルで扱いやすい⇔今のレベルではやや難しい
今の技術と体力で扱いやすいのであれば一日中ゲレンデを楽しめるし、バックカントリーでも不意な雪面状況にも対応しやすいだろう。
逆にレベルアップを目指すのならば少し背伸びをして技術に向き合うことが大切だと思う。
これも気軽に考えられない部分である。
大手メーカー⇔ガレージブランド
ここは完全に好みではあるが、人とカブりたくないって人の拘りはやっぱり強いだろうし、往年のユーザーであったりトータルコーディネートに熱心であれば大手メーカーが気になるだろう。
グラフィックなども含めてけっこうバカに出来ない部分である。
ゲレンデオンリー⇔バックカントリーに挑戦してみたい
管理されたゲレンデ内で使うのか、バックカントリースキーなども視野に入れるのかでも、スキー選びは大きく変わる。
セカンドスキーを選ぶなどの場合はこの手の基準は忘れにくいが、一台で全てをこなしたいと考える場合にはかなり判断が難しい基準となる。
それは『数シーズン先の自分が気になっている事』は知る術が無いからである。
それでも近年バックカントリースキーが注目を集めている中で、中年のスキー選びの基準としてはなかなか悩ましいポイントになり得ると言えるのではないだろうか?
価格無視⇔予算重視
当たり前な事だがスキーを購入しても滑るフィールドに行くお金が無くなってしまったら元も子もない。
「今シーズンの予算はこれだけ」という中でやり繰りするのが大事なのか、「スキーへの投資は青天井」という考えなのか、とても重要なポイントである。
さらに家庭があったりすると自分の予算額と伴侶のそれとの乖離にも気をつけなければいけない。
単純に自分一人の予算組がまかり通るか分からないという事も中年がスキーを選ぶ難しいポイントではある。
いろいろとバランスをとって考えなければいけない難しい基準でもある。
基準の優先順位
ある程度自分の中でスキー選びの基準が整ったら、それらに順位付けするのもまた重要な作業。
「予算は絶対なので型落ちでも良い」というのと「予算はあるがこの先の数シーズンを考えるとチョット奮発するので最新のモデルが欲しい!」というのでは違う。
先に挙げてみた基準であっても人によっては
- 予算
- 操作性
- 重量
という人もいるだろうし
- メーカー
- 目的フィールド
- 予算
という人もいるだろう。
基準とその優先順位がハッキリするとカタログの見方も変わるしショップスタッフに投げかける問いも変わる。
中年のスキーでは「基準グラグラの状態で購入して後悔した!」なんてことにならないようにしたいですね。
まとめ
今回は『スキー選び』について個人的に大切だと考えていることを書いてみました。
スキーのレビュー記事を載せている立場からすると、ニュートラルな状態でスキーを判断する事の難しさは身に染みてわかっているつもりです。
しかし実際に購入するとなると受注の締め切り次期や在庫数に限度がある場合が多いわけです。
意外にのんびりと構えていられないのがスキー選びの実際ではあります。
そんな中にあって、同じ中年で頑張ってスキーしている同志には出来るだけベストなスキーを選んで欲しいと思っています。
そんなワケで今回の記事が誰かのお役に立てることを祈っています。
スキマ産業(仮)は中年になってもスキーや登山を楽しみたい人を応援します。
若い頃とは違う体力と回復力。どうやったら楽しむ事が出来るのだろう?
そんな事を考えながら道具なんかの情報をユルく発信していきます。
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